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腹腔鏡下先天性胆道拡張症手術

 肝臓で作られる胆汁と膵臓で作られる膵液は、それぞれ胆管と膵管を通って十二指腸乳頭部(ファーター乳頭と同義)に開口した小さな穴から十二指腸に流れ込みます。十二指腸乳頭部には括約筋があって、閉まったり緩んだりすることで、胆管内や膵管内で逆流が起きることを防いでいます。

 

胆管と膵管は十二指腸乳頭部で別々に開口していることもありますが、多くの人では先に合流して1本の管(共通管)として十二指腸に開口しています。その合流部は、通常、括約筋の作用が及ぶ十二指腸壁内にあります。

​十二指腸乳頭部

​十二指腸乳頭部の拡大図

 膵・胆管合流異常は、解剖学的に膵管と胆管が十二指腸壁外で合流する先天性の奇形です。そして、膵・胆管合流異常があると、共通管に括約筋の作用が及ばないため膵液と胆汁が相互に逆流し、胆管炎、胆石形成、閉塞性黄疸、急性膵炎などの様々な病態を引き起こします。膵・胆管合流異常を有する状態で、なおかつ胆管拡張を伴うものを先天性胆道拡張症と呼びます。

最も典型的な先天性胆道拡張症の病態

 先天性胆道拡張症手術は、先天性胆道拡張症の患者さんに対して行われる標準的な手術治療法です。

主な症状

 

 腹痛の他、嘔吐、嘔気、発熱、黄疸、灰白色便、腹部腫瘤などの症状を認めます。しかし、無症状なまま経過している患者さんや、症状をあまり自覚していない患者さんも多く、他の疾患に対するさまざまな画像検査の際に、偶然に発見されることも少なくありません。

がんとの関係

 膵・胆管合流異常の患者さんには胆道がん、特に胆嚢がんが好発することが知られています。一般のがん発症年齢よりも好発年齢が15~20歳ほど若く、20~30歳代から加齢とともに発がんリスクが増大します。がんの発生頻度は、先天性胆道拡張症は約10%、胆管拡張の無い膵・胆管合流異常(胆管非拡張例)では約30%(ほとんどが胆嚢がん)と報告されており、正常人に比べて非常に高率です。

検査

 画像検査として超音波検査、CT、肝胆道シンチグラフィーなどの他、内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP)、磁気共鳴胆管膵管撮影(MRCP)を用いて胆管や膵管の構造を調べます。また血液検査で肝臓や膵臓の機能を調べます。

手術の方法

 先天性胆道拡張症では、がんが発生しやすい拡張した肝外胆管と胆嚢を切除し、胆管を小腸(空腸)と吻合(縫い合わせて繋げること)します。一方で、膵・胆管合流異常があっても胆管非拡張例では、胆管を切除するべきか一定の結論が得られていません。現状では、胆管は切除せずに胆嚢摘出術のみを施行して経過観察することが多いです。


 これらの手術は一般的に開腹下に行われていますが、本田医師はこれまでに腹腔鏡下先天性胆道拡張症手術を30例以上、また、一連の手術手技の中でもとっとも難度の高い胆管空腸吻合術を腹腔鏡下に100例以上手掛けています(2020年10月現在)。

 

 ただし、腹腔鏡下手術では特に肝内の胆管に狭窄がある場合などに、十分な治療ができない場合があります。そのような場合には、むしろ積極的に開腹下手術をお勧めすることがあります。

予後

 発がんする前に適切な手術がなされれば予後は良好ですが、手術後に胆道がんが発生することもありますので、定期検査を継続することをお勧めします。

 

 胆道がんが発生した場合は、通常の胆道がんと予後は同一です。また、胆管狭窄部を残すと肝内結石が形成され、胆管炎を繰り返すことがあります。

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